リバプールと言えばロックンロールとフットボールだろう。
かつて世界に名を馳せたロックスターを生んだリバプールの地で、
レッズは最高のフットボールを示そうとしている。
ドイツ仕込みのゲーゲンプレスを以て90分間戦い続け、
時には敗戦濃厚の試合さえも覆して劇的な勝利を掴んできた。
選手、クラブ、サポーター全てから尊敬を集める稀代の名将と共に、
リバプールは今季タイトルに挑戦している。
試合問わず様々な表情を見せ続け、尊敬を集めるユルゲン・クロップ。
しかし彼は稀代のモチベーターであると同時に、優れた戦術家でもある。
マインツで形作り、ドルトムントで大成させたゲーゲンプレッシング。
その猛威はフットボールの母国イングランドでも猛威を奮っている。
就任から年月を経るごとにその完成度は高まっており、
マネとサラーというリーグ屈指の両翼を得た事でその切れ味は凄まじさを増した。
そのハイテンポは90分間通して行われ、
勢いに飲まれたチームが試合を立て直す事は困難を極めている。
彼らのリズムに乗せられてしまえば、ロック以外を演じる事は出来ないのだ。
しかし、ハイテンポな展開のみをひたすら極め続ける彼らだからこそ、
不得意な試合展開に持ち込まれると脆さも目立ち始めてしまう。
彼らが得意にしているのは激しい打ち合いであり、
落ち着いてボールを保持するような静かなゲームでは決してない。
それゆえ不用意にボールを持たされる展開に持ち込まれたり、
激しいプレスを掻い潜られるような事態になればゲームプランが崩れやすい。
ビッグクラブ相手に最高の試合を演じたかと思えば、
格下相手に散々な内容の試合をしまてしまう不安定さが拭えないのだ。
(そこが今のリバプールの魅力でもあるのだが)
とはいえ不安定さも徐々に解決されつつある。
新加入のサラーは開幕から抜群の存在感を発揮してチームにフィット。
マネに極度に依存してしまった昨季の大きな反省点を早速克服している。
不安定さを拭いきれない要因の1つに選手の消耗も挙げられる。
1試合を通してハイテンポな内容を繰り広げる以上、
選手たちの消耗は他のチームよりも大きなものとなっている事だろう。
昨季はシーズンが深まるにつれ選手の離脱が相次ぎ、
選手層の薄さも相まって勝ち点をこぼす大きな要因となった。
代えの利かない選手の存在が大きいという点においては、
今季のリバプールも大きな懸念を抱えている。
守備に関してはCBマティプの存在の有無が大きな影響を及ぼしており、
アンカーのヘンダーソンに関しては彼の存在自体が試合の勝敗に関わってくる。
今やワールドクラスの階段を駆け上りつつあるコウチーニョは無論だが、
サラー、マネ、フィルミーノらの最前線は誰か1人でも欠ければ大きく質を落とす。
両翼の2人以上に、フィルミーノに関しては実質的な代役が不在で、
バックアッパーを務めるソランケ、イングス、ストゥリッジは全くタイプが異なる。
ベストメンバーで望めれば簡単には負けないであろうが…
その布陣で挑める状況はシーズン数度しか訪れないと見て言いかもしれない。
が、最も消耗の激しい中盤に関しては今季状況が変わってきている。
ヘンダーソンの独壇場だったアンカーにおいてジャンが適応を見せ始め、
昨季は左SBとして奮闘したミルナーが今季本職の中盤として起用されている。
更にウイングから中盤へコンバートされたコウチーニョの存在も大きく、
チームの戦術に完全に適応したワイナルドゥムも心強い。
ここに長期の負傷からララーナが戻ってくれば、質の高いターンオーバーを保証できる。
昨季は弱みだった中盤の選手層に関しては、むしろ強みにさえなり始めているのだ。
(反面、最前線の選手層は全く解決できていない)
観る者全てを魅了してしまうポテンシャルを秘めているが、
タイトル獲得という最高の結果を出せるかどうかは定かでないのが現状だ。
リバプールに悲願の優勝トロフィーが届くかどうかは
言うまでもなく指揮官と選手達に懸かっているが、
今季これまでの試合ではその真価を十分に発揮していると言っていいだろう。
問題は継続性であり、そこさえクリアできれば
国内外問わず優勝争いに食い込める事は想像に難くない。
最高のシーズンになるのか?それとも失意のシーズンになるのか?
どちらにせよ、ピッチの傍にクロップの姿がある事だけは願いたいものだ。
![]() |
Matthew |