リバプール 0
マンチェスター・シティ 0
注目のカードが第8節で実現した。
昨季優勝のマンチェスター・シティが
情熱の地アンフィールドへ乗り込むビッグゲーム。
リバプールとお互い今季無敗同士での対戦。
今季こそは、とプレミア優勝に向け期待が高まるリバプールなだけに、
何が何でも勝利が欲しい試合となったはずだ。
お互い譲らぬ攻防戦
立ち上がりからリバプールはアグレッシブさを示した。
代名詞とも言えるゲーゲンプレスを文字通りシティに浴びせ、
相手陣内深くでのプレーに留まらせる。
シティも彼らの哲学そのままにショートパスを繋げようとするも、
レッズの執拗なプレッシングと球際の強さに押さえこまれる展開が続いた。
守備時におけるリバプールの3トップ、「マネ・サラー・フィルミーノ」のポジショニングに
プレッシングの狙いが表れていたように思える。
フィルミーノの役割として、シティのGKあるいはCBがボールを持った際には
徹底してアンカー、フェルナンジーニョへのパスコースを消す事が第一。
ボールホルダーへのアプローチよりも、フェルナンジーニョへのコースを消し
彼をシティのビルドアップから孤立させることを試合通して遂行している。
ボールホルダーへのアプローチは両翼のマネとサラーの仕事だ。
ハーフスペースを主戦場とし、内から外へプレスを仕掛けることで
シティは自ずと両サイドへのパスに誘導されるわけだが、
インテリオールを務めるD.シルバ、B.シウバはマンツーマンでつかれている為
サイドバック→ウイングへのパスに限定される。
サイドで1対1の状況を作られやすくはなってしまうものの、
そういった状況を想定して起用されたのが、この日右SBに入ったゴメスである。
今季はCBでの起用も目立つジョー・ゴメスはこの日のキーマンの一人で、
文字通り90分間攻守において重要な存在になり続けた。
スターリングとマッチアップする形となったゴメスは対人戦に優れており、
正面きっての1対1で簡単に突破されるリスクは低い。
(事実、スターリングがゴメスに対し消極的なプレーに終始している)
さらに前線の3トップがパスコースを限定し、かつボールをシティの左サイドへ
誘導させることで上記の狙いは機能した。
ビルドアップの問題を解消するためD.シルバ、B.シウバらも下がってボールを捌くも、
そうなれば最前線のアグエロはますます孤立しゲームから外れていく。
まさに連動性と球際の強さを活かした、リバプールらしい試合運びだ。
立ち上がりから、ゲームは非常にタイトな展開となった。
激しいプレッシングに晒されながらもエデルソンを中心に冷静にパスを捌くシティ。
リバプールも狙いこそハマったものの決定機を作るには至らず、
両チーム共にスコアレスな時間が続いていく。
そして試合に影響を与えたのが、
前半途中で負傷退場を余儀なくされたミルナーの存在だろう。
この日のミルナーの役割は非常に重要なもので、
攻撃時には2CBの左前に位置しビルドアップとウイングへの展開役を担う。
ボールロスト時には中盤での潰し役として徹底的に球際へアプローチし、
広いエリアをヘンダーソンやワイナルドゥムらと連携してカバーリングしている。
攻撃時に必要とあれば高い位置まで顔を出すことも求められ、
戦術的にも能力的にも彼の存在は重要な意味を担っていたはずだ。
しかし彼が負傷し、ナビ・ケイタと変わった事でその役割は終わりを迎える。
確かにケイタも豊富な運動量と高度なボールスキルを兼ね備えたダイナミズム溢れる選手だ。
しかし他の選手との連動性、球際でのフィジカルコンタクトの強さを鑑みれば、
ゲームプランを修正することは免れられず….。
少なくとも立ち上がりから見せていた素晴らしい機能性は変化していくことになった。
ゲーゲンプレス上等。ブレないグアルディオラの哲学。
ハイプレスでゲームのコントロールにこそ成功しなかったシティだが、
そこでも動揺せず自分達らしさを貫いたシティもまた見事。
特にGKエデルソンの技術が頼もしい限りで、
自陣PA内という極度に危険なリスクが伴うエリアであろうと冷静にパス交換を行い、
隙あらば弾丸フィードで敵陣へボールを送り込む彼の存在は心強い。
リバプールの3トップらが少しでも足並みをズラした瞬間を見計らい
幾度となくシルバら中盤の選手にボールを届けたことは忘れてはならない。
とはいえ、この日のシティにとって満足いく内容とは程遠いと言えるだろう。
後半に入っても決定的なチャンスは数少なく、
裏にフリーで抜け出したマフレズのシーンが印象的な程度。
途中交代で入ったG.ジェズスやザネらは疲労の色をみせるリバプールDFの脅威であったし、
実際PK獲得など一定のパフォーマンスを見せることはできたものの…
マフレズのPK失敗が悔やまれる。
勝ちきれない悔しさも、上々の内容
スコアレスドローではあるが、優勝候補筆頭のシティに対して
全体的な内容では上回ったと言えるリバプール。
この試合で勝ち点3を奪えれば今シーズン大きな原動力となったかもしれないが、
そう簡単には勝たせてくれないのが昨季独走して優勝したシティの強みだろう。
選手らに疲労の色が見え始める終盤まで試合をコントロールしたのは紛れもなくリバプール。
立ち上がりから消耗の激しいプランを取り続けた以上、そういった展開はやむを得ないこと。
クロップからすれば早い時間で得点を重ね、耐え忍びたかったところだろう。
ホームとはいえ、タイトルホルダー相手に正々堂々とした戦いをみせられたことを、
彼らは誇りに思っているはずだ。
PK獲得で試合をモノにしたと思われたが、不運にも勝利を逃してしまったシティ。
決定機を2度外してしまったマフレズは残念ではあったが、
立ち上がりから苦しい時間帯を過ごしても前へ進んだチームは見事。
デ・ブライネという大黒柱を欠いた影響も感じられる試合ではあったものの、
今季最も難しい試合の一つであったことは確かなゲームで「負けなかった」のだ。
最低限の仕事はしたと言っていいだろう。
懸念材料はフェルナンジーニョを封じられた時のチームバランスか。
アンカー+2CBのトライアングルが機能しないとシティ全体のバランスに影響し、
彼らにとっての「いつも通り」が発揮できないことは明らかだ。
実質フェルナンジーニョしかアンカーの適任者がおらず、
唯一計算の立つ代役ギュンドアンは負傷離脱中。
試合途中にはフェルナンジーニョが苛立ちからラフプレーに走る場面もあっただけに、
少なからず不安を抱えるポジションとなっていきそうだ。
Matthew |