チェルシー 4
37′ アザール
44′ アザール
80′ アザール(PK)
83′ ウィリアン
カーディフ 1
16′ バンバ
最高のスタートを切ったサッリ体制
開幕から4連勝を果たし首位タイを走るサッリ・チェルシー。
前指揮官コンテとは違った戦術的アプローチをとりつつ結果を出したことで、
チェルシーの選手達は試合ごとにその組織としての自信を深めている。
ニューカッスル、ボーンマス相手に苦しい時間を耐え抜き勝利したことも、
サッリの哲学に対する選手らの理解と信頼を深める効果をもたらしたはずだ。
第5節の相手は昇格組カーディフとなった。
チェルシーにとってホームでの対戦ともなるだけに、勝利で単独首位を狙いたいところだ。
モラタ&ウィリアンに代え、ジルー&ペドロを先発起用
前節ボーンマス戦と大きく変わったのが前線2人のチョイス。
不発が続くモラタ、代表での長距離移動が憂慮されたウィリアンに代え、
ジルーとペドロが先発に復帰した。
このサッリの決断がこの試合を大きく変えた。
ジルーはモラタに比べ、プレーの選択肢こそ限られたものだ。
”ポストプレー””エリア内でのフィニッシュ”
シンプルだが明確で、これ以上なくハッキリとした使命をジルーは担っていた。
エリア内外問わずその正確なポストプレーは攻撃の起点となり、機能していた。
カーディフ戦、チェルシーの攻撃を「形」にしたのは彼の存在と言ってもいいだろう。
カーディフは左右のサイドバックが内側に絞り、
コンパクトなDFラインでゴール前を固めてきた。
その極めて狭いスペースで活きたのがペドロのアジリティーであり、
細かなステップから放たれるシュートの数々はそのすべてがゴールの可能性を感じさせた。
結果としてゴールにならなかったことは残念だったものの、
ウィリアンと交代するまでの間、彼は非常に多くの局面で顔を出し、
ビルドアップからチャンスメイク、フィニッシュに至るあらゆるプレーに関与した。
美しくデザインされたカーディフのセットプレー
この試合でまず主導権を握ったのはカーディフだった。
カーディフは相手のチームスタイルによってその戦い方を変えるが、
”昇格請負人”ニール・ウォーノック監督が採ったこの日の采配はシンプルだ。
プレッシャーラインはハーフウェーラインに設定、
4+4のブロックをコンパクトに形成し、パスコースを限定しつつボール奪取を図った。
ボールを奪えば手数をかけず前線のFWウォードめがけ蹴り出し、
彼のポストプレーからサイドを駆け上がったウイングへ____
個で打開できる選手に欠けたカーディフにとって最も現実的なプランだったはずだ。
その狙いが完璧に機能していたとは言えないが、
中盤の底で奮闘するアーターを筆頭に、ギリギリの局面で体を張るカーディフ守備陣は奮闘していた。
アザールは立ち上がりから低い位置まで下がってはボールを引き出していた。
これがサッリから出されたオーダーであったのかは不明だが、
少なくともアザールのプレーをスタートさせる位置を下げさせた効果は大きかっただろう。
その頑張りが報われた先制点だった。
モリソンのロングスローを含め、カーディフの強みはセットプレーにある。
先制点を決めたCBバンバは、直前のCKでも決定的を迎えていた。
それだけカーディフはセットプレーを重視し、少ないチャンスを見出していたのだろう。
ゾーンディフェンスをチェルシーが敷いていることも作用してか、
失点のシーンにおけるチェルシーの選手達はボールウォッチャーになりすぎていた。
4連勝で勢いに乗っていたチェルシーに課題を突き付けた。
ゴールへの道を示すエースの重責
上述したように、この日のアザールのプレーは通常より低い位置からスタートした。
カーディフの中盤が形成するブロックラインの外側をなぞるよう移動し、
ボールを引き出してはドリブルで相手を引き付け、スペースを作った。
彼がもたらしたスペースをカンテやコバチッチが有効活用したことで
カーディフの中盤は多くのスタミナを消費させられ、結果として大量失点の要因ともなった。
カーディフの前線2人、ウォードとリードは前後の関係をもって
チェルシーDFラインとアンカー・ジョルジーニョに対してプレスをかけたものの、
アザールが低い位置まで下りてパスと崩しの起点となったことで効果は希薄化。
低い位置からドリブルを仕掛ける事はカウンターを受けるリスクも大きいが、
簡単にはボールロストしないアザールだからこそ、この選択は功を奏した。
囲まれれば周囲と連動してマーカーを剥がし、打開し、ゴール前へ。
”崩しのマスターキー”ともいえるべきその働きは称賛に値する。
ハットトリックという最高の結果も叩き出したエデン・アザール。
エースが担う重責を、彼は楽しんでいる。
”プレー原則”と”アイデア”の融合
チェルシーは試合ごとにマウリツィオ・サッリの哲学を学んでいた。
そしてその理解と共有が深まったことは、この日のカーディフ戦を見て明らかだ。
繋ぐことを念頭に置いたビルドアップはその正確性こそ確かだったものの、
決定的な崩しのアイデアが不足しがちでもあった。
しかしこの日のチェルシーはジルーが先発したことで
アタッキングサードでの崩しがシンプルながらも効果的な形を成していた。
そして最終局面での崩しのビジョンが定まったことで、
マイボールを保持しながらも攻撃の局面を進める事が可能となったと言える。
いい意味でジョルジーニョが目立たなくなってきた。
彼ありきの組み立てから脱却しつつあるのだ。
彼が彼本来の役割であるリンクマンとしての働きに集中できつつあり、
それこそが今後チェルシーという組織を機能させるうえで重要だろう。
「プレー原則とアイデアの融合」はサッリが望むチームの姿のはずだが、
その片鱗が既に見え始めていることは見逃せない。
「チームを形づくるには2ヵ月は必要だ。しかし、このチームは賢い選手が多い。
そう時間はかからないかもしれない」とサッリは語っている。
その発言の真偽がわかりまで、そう時間はかからなそうだ。
Matthew |