マンチェスター・ユナイテッド 1
68′ マタ
アーセナル 1
89′ ジルー
18日にプレミアリーグ第12節、
マンチェスター・ユナイテッド vs アーセナルがオールド・トラッフォードで行われた。
アーセナルは前節ノースロンドン・ダービーで引き分け首位争いから一歩後退。
名門相手のアウェイゲームとはいえ勝利を奪いたいところだが、
代表ウィークもあり選手のコンディションが懸念されていた。
対するホームのユナイテッドは未だ波に乗り切れずEL圏すら届かない。
最高クラスの人材を抱えながらも結果を出せないモウリーニョへの批判も多く、
仮にこの試合を大敗でもすれば、それこそ解任騒動に繋がる恐れがあった。
さらにユナイテッドはバイリー、スモーリングのCBが負傷離脱中。
攻撃に自信を持つアーセナル相手に先発指名されたのが
マルコス・ロホとP.ジョーンズだった事からも、
アーセナル有利と見られていた。
ここまでリーグ戦全試合フル出場のイブラヒモビッチは出場停止。
そこで1トップに指名されたのは、ルーニーではなく10歳の新鋭だった。
10月31日に19歳になったばかりのラッシュフォードは、
その類まれなるアジリティーとスプリント力で文字通り駆け回った。
これまでのユナイテッドには無かった「動く」1トップは
守備時には献身的なチェイシング、攻撃時には躊躇なく飛び出しを敢行。
時にはサイドの選手が中央へカットインできるスペースメイクを担当するなど、
今季ユナイテッドには欠けていた組織的な攻撃を助け続けた。
対するアーセナルもボールを持てば”らしさ”を感じさせる攻撃を見せ、
ユナイテッド陣内へ簡単に侵入し続ける。
とはいえこの日のユナイテッドは攻守に「戦う姿勢」を見せた。
セカンドボールへの反応、1対1での責任感….
この試合に懸ける想いの強さを示すように、ユナイテッドは戦っていた。
アーセナルはボールこそ回せるものの、
ラスト30mで違いを生み出す事が出来ず、シュートが打てない。
焦れたサンチェスは低い位置まで下りてきてビルドアップに参加。
これにより半ば追い出される形でエジルは代わりに最前線へ入るが、
低い位置のサンチェスに凄みはなく、ストライカーではないエジルは孤立。
ボールを触る事でリズムを掴むサンチェスだが、
同じようにプレーリズムを作るエジルにとっては苦痛の展開だっただろう。
アーセナルは決定機を作れず、かといってユナイテッドは決めきれない。
前半はそのままスコアレスで終了した。
ハーフタイムを終え、アーセナルは試合の主導権を握ろうと
ゲームテンポを意図的に落ち着かせようとした。
が、そんな事を簡単にさせるほど、この日のユナイテッドは冷めていなかった。
”今季プレミアリーグで最も走らないチーム”
であるはずのユナイテッドは、果敢にボールに寄せては敵陣へ走る。
アーセナルへ圧力をかけ続け、しばしば敵陣へ押込み一方的な展開に。
この日のユナイテッドは、ピッチ上の全員がひたすら勝利を欲していた。
そして攻勢をかけ続け、その想いは報われる。
MATA pic.twitter.com/J0d5P4W3bY
— Axel-SMITH (@FantaskickAxel) 2016年11月20日
美しいゴールで先制したユナイテッド。
今季精力的に中盤を支え続けたエレーラとマタから生まれたゴールは、
見事なまでにアーセナルを切り裂いた。
そして勝利の余韻に浸る事なく、ユナイテッドは堅個なブロックを敷き、
奪った先制点を守りきる体制に入る。
アーセナルの選手達も巻き返そうとするものの、疲労が見え始める。
ガナーズのパス&ムーヴを熟知しているモウリーニョだからこそ、
そのブロックの敷き方、中央の閉め方は見事だった。
ブロックをなぞるようにパスを回させ、焦れさせる。
そして瞬間的な寄せで奪えば、一気果敢のカウンター。
戦術はシンプルながらも、十分だった。
ボールも動くし、人も動く。
しかしそれはユナイテッドの「庭の外」。
危険な位置への侵入も、突破もなかなか許してもらえない。
ヴェンゲルは守備のリスクさえも承知で選手を交代し、
ジャカ、チェンバレン、ジルーを投入。
そしてこの交代が見事、終了間際の同点弾をもたらした。
GIROUD pic.twitter.com/RBX1pQnImk
— Axel-SMITH (@FantaskickAxel) 2016年11月20日
ブリントとの1対1を振り切ったチェンバレン。
そして、数少ないチャンスをモノにしたジルー。
鮮やかな、そして強烈な同点弾を突き刺したアーセナルは、
オールド・トラッフォードのサポーターを一瞬で黙らせてしまった。
得点後のジルーは、ただ自身の果たした責務を噛み締めていた。
1トップ・サンチェスのシステムが機能した事で先発機会は激減。
それでも彼は、サンダーランド戦を始め途中出場からでも結果を残してきた。
難しい状況だからこそひたむきに戦うエースは、この日もアーセナルを救った。
そして試合終了の笛が響き、引き分けが告げられた。
勝利に価したプレーを見せたユナイテッド。
またしても、勝利を取りこぼしてしまった。
アーセナル相手に負けなかった、と言えば聞こえはいいが、
勝てる試合を落としてしまった事の意味の方が遥かに重い。
ヴェンゲルは安堵の表情でピッチを去り、
モウリーニョは怒りと悲しみが入り混じった眼差しで引き上げていった。
確かに結果は引き分けで、勝ち点を分け合った。
が、試合後のピッチの選手達の表情が全てを物語っていた。
アーセナルの選手達には笑顔があり、
厳しい状況でも最後まで戦い続け、追いついた自分達を称えあっていた。
しかしユナイテッドの選手達は悔いるように地面を見つめ、
その表情に「上位相手に負けなかった」という感情は無かった。
ただひたむきに勝利を目指していたからこそ、
この現実は受け入れられないし、受け入れたくない_____
そんな感情が、サポーターに挨拶をする選手達には感じ取れた。
確かにユナイテッドは勝利に値したと思えるし、
勝利を逃してしまった事は残念で仕方がなく、「またか」とも思える。
しかしこの日のユナイテッドは明らかに「戦う集団」であったし、
試合の序盤で見せていた攻守におけるエネルギーは見後だった。
主力に負傷が相次ぐ中でも、上位クラブ相手に戦える選手がいる事を
確認できただけでも、チームは前進したと言っていいだろう。
むしろ重要なのはこれからであり、
この試合を引きずってまた従来のようなグダグダな組織に戻っては無意味。
今季何度も悔しい経験をしているであろうユナイテッドの選手は、
そろそろ目覚めなければいけない時間だ。
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Matthew |