モーゼスはこれまでチェルシーで苦難の時間を過ごしていた。
チームに参加したのは2012年。
クリスタル・パレスとウィガンで結果を出しビッグクラブ入り。
輝かしいキャリアを夢見ていた彼であったが、
その後はレンタル移籍を毎シーズン繰り返す苦しいものだった。
毎年プレシーズンで好印象を与えては飛躍が期待され、
レンタル移籍….。
そして失意のキャリアを過ごす彼は、アントニオ・コンテと出会った。
レンタル移籍が噂されるも、コンテは彼をチームへ残す事を決断。
それでも開幕当初は4-2-3-1システムの右サイドの3番手。
先発機会はカップ戦や重要度の低い試合ばかりで、
彼自身フラストレーションのたまる状況だったかもしれない。
しかしチームが結果を出せない時間が続くと、
コンテは3バック導入を決意。
3-4-3をベースに、運動量と単独で違いを作れる選手をWBに求めた。
コンテは左にタイトな守備とバランスに長けたマルコス・アロンソを。
右サイドに、爆発的なスピードと運動量、
そして何より豪快なドリブルを兼ね備えるモーゼスを指名した。
右サイドで実績を残してきたイバノビッチでも、
安定した守備と攻撃で貢献してきたアスピリクエタでもなく、
モーゼスに右WBのポジションを与えた。
”ハードワークができれば、コンテはチャンスを与えてくれる”
彼はインタビューでこう応えている。
ネームバリューでもなく、実績でもなく、「今」を見てくれると話した。
不慣れな右WBで起用された当初はバランスが不明確で、
ポジショニングに戸惑う場面も多くあった。
しかしそれでも彼は諦めず、
ポジションを掴みたい一心でピッチを走り続けた。
ボールを持てば果敢に攻め上がり、
中へのカットインから強烈なシュートを放つ。
試合を重ねる毎に戦術理解も深まり、
組織的なプレッシングとコンビネーションを見せていく。
持ち前の運動量をベースに、90分を通してのハードワーク。
深い位置でカウンターが開始したとあっても、
モーゼスが右サイドを強烈なスプリントで攻め上がる姿は
今シーズン何度も観ている。
コンテの下対人守備の技術を吸収していけば、
総合的にハイクオリティーなサイドプレーヤーとなる可能性すらある。
今年で26歳になる彼は、まだまだ成長するはずだ。
はっきり言える。
彼のポジションはチェルシーにあり、不可欠な存在だ。
コンテが求める右のウイングバックは、
アスピだろうがペドロだろうが、ブラナーだろうが体現できない。
毎年のように活躍の場を探していたモーゼスは今、
チェルシーの右サイドに居場所を見つけている。
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Matthew |