4月15日、最高の戦いを披露してきたシティに、
思わぬ形で最高の瞬間が訪れた。
14日トッテナム戦を3-1で快勝したシティだったが、
翌日15日に行われた2位ユナイテッドが最下位WBAに敗戦。
今季の優勝が確定し、4季ぶりのシーズンタイトルを獲得した。
完璧主義者故の、完璧な戦いぶり
今季のプレミアリーグがマンチェスター中心に回ったのは言うまでもない。
昨季こそチーム構成に奔走し
らしくない戦いを露呈させてしまったジュゼップ・グアルディオラだったが、
再起を誓った今シーズンは盤石な試合運びを見せた。
各ポジションに適正と実力を兼ね備えた補強を次々実行し、
懸念されていたポジションをむしろ強みに変えて見せている。
高い技術と戦術が伴ったポゼッションは猛威を奮い、
そのほとんどの試合でゲームの主導権を握り続けたシティ。
宣教師グアルディオラがマンチェスターの地で説いた崇高な教えは、
2年の時を経て最高の結果を生み出すに至ったのだ。
今季のシティは攻守に渡って質の高いプレーを継続している。
それは選手の実力をペップが最高水準まで引き出し、
また選手自身もその期待に応えて見せた事に他ならない。
そこで、今季シティにおいて印象的な活躍を見せた選手について、
私の独断と偏見で選んでいきたい。
時代を体現する現代型GK
___Ederson Santana de Moraes
今季シティが安定した戦いを続けられた大きな要因は
GKエデルソンの貢献が非常に大きい。
シティ躍進の立役者とさえ言っていいほど、
彼の存在なしに今季の試合は語る事ができないだろう。
守護神として期待されたブラーボが期待を裏切る結果となり、
また新たな守護神として指名されたのが、まだ24歳のブラジル人GKだった。
冷静さと絶大な自信を覗かせるその立ち振る舞いは、
高度に洗練された技術に裏打ちされたもの。
安定したゴールキーピングは勿論、
中盤のゲームメイカーさながらのボール捌きが彼の持ち味だ。
距離を問わない超高精度のロングフィードは
しばしば相手の守備ブロックさえも無効にし、
文字通り「攻撃の起点」として試合に大きな影響を及ぼしている。
対戦相手からすれば厄介この上ない存在だったはずだ。
プレッシャーの有無関係なしに、鋭い弾道を送り込まれるのだから。
窮地を救うファインセーブも印象的で、
エリア外への飛び出しにも躊躇がない。
シティのDFラインが安定したパフォーマンスを見せたのは、
背後で構える彼の存在によるところが大きい。
”クラシカル”から”モダン”なセンターバックへ
___Nicolás Hernán Gonzalo Otamendi
”オタメンディはグアルディオラが求めるCBではない”
昨季致命的なミスから失点を重ねたシティの原因の一つに、
彼の名が挙げられる事はそう珍しい事ではなかった。
対人戦における圧倒的なフィジカルコンタクトが彼の魅力であり、
彼に足元の技術と高度な戦術理解を求める監督は少なかったはずだ。
新加入ストーンズが適応に苦しみ、コンパニが負傷に苦しむ影響は
彼自身のパフォーマンスに大きく影響したことだろう。
しかし今季のオタメンディが示したパフォーマンスは、
誰がどう見ても、「ペップが求める」センターバックとしての矜持だった。
持ち前のフィジカルはそのままに、
ビルドアップの起点としての高い技術と状況判断が磨かれている。
見事なまでのフィード能力を開花させ、
彼はこの1年で何ステージも上の選手へと成長を遂げたはずだ。
クラシカルな武闘派センターバックは、
たった1年で、ペップのスタイルを体現するCBへと変貌した。
期待に応えた両サイドの仕事人達
___Kyle Andrew Walker
___Fabian Delph
グアルディオラのチームにおけるサイドバックは、
他のチームとは一線を画している。
攻撃時はボランチの位置まで上がりビルドアップの中心となり、
ネガティブ・トランジション時には対カウンターの備えとして
広大なエリアをカバーするだけの機動力が求められる。
莫大な運動量をベースに中盤としての立ち振る舞いも要求されるだけに、
その戦術を消化できるだけの人材は決して多くは無い。
”偽インテリオール”とさえ表現されるサイドバックを求め、
シティは昨夏1億3000万ポンドをも投資する事を決断した。
今冬ファン・ダイクがその記録を更新するまで、
カイル・ウォーカーとバンジャマン・メンディは
「DF史上最高の移籍金で加入した選手」として期待された。
残念ながらメンディは全十字靭帯断裂によりシーズンを棒に振ったものの、
文字通り右サイドの主軸を担ったウォーカー、
そしてメンディの代役として期待に応えたデルフの2人は称賛に値する。
ウォーカーは強靭なフィジカルを押し出した攻撃的サイドバックとして
評価を確立していたものの、5400万ポンドとも言われる
移籍金に見合った実力を改め証明してみせた。
ウォーカーとデルフが活躍を見せた大きな要因は、
彼らが持つ戦術的インテリジェンスの高さによるもの。
グアルディオラの難解かつ高度な要求を消化し、試合で決定的な役割を担った。
特にデルフは本職が中盤セントラルの選手であり、
グアルディオラ就任により大きな成長を遂げた選手の一人だ。
チームに3バックのシステムが浸透するまでの間、
デルフが左サイドで貢献した功績を忘れてはならない。
シーズン終盤には新システム導入などにより出場機会が減ったものの、
より飛躍が期待されるだけの素養が彼には備わっている。
研ぎ澄まされた戦術的インテリジェンス
___Fernando Luiz Rosa
彼が何か試合において決定的な仕事をする事は少ないかもしれない。
ハイライトやゴール集だけでは、彼の魅力は語れない。
いついかなる時であろうとも、
グアルディオラはフェルナンジーニョを信頼してきた。
いち早くペップの哲学をその身体に染み込ませた彼は
不慣れなサイドバックに抜擢されるほどの戦術理解度を示し、
ポジションの変更やチームバランスの変化にも柔軟に対応する。
今季は本職でもあるアンカーでその実力を遺憾なく発揮し、
シンプルなパスワークからリズムを作り出している。
的確に枠内を捉えるミドルシュートは攻撃に確かなアクセントをもたらし、
守備時には鋭い読みからのインターセプトとカバーリングを徹底。
攻守において彼のプレーが効果的であることに疑問の余地はなく、
「彼の代役がいない事が最大の問題」と評されるだけの理由がそこだ。
代えの利かない唯一無二の存在
___David Josué Jiménez Silva
シティには素晴らしい選手しかいない、と言う他ないのだが、
それでも彼の存在抜きにシティを語る事はできないだろう。
髪型新たに迎えた今シーズン、
長らくシティを支え続けてきた重鎮は選手として最高の領域に近づいている。
上質なビルドアップと崩しのアイディアを常に供給しておきながら、
ネガティブ・トランジション時には瞬間的な寄せからカウンターの起点に。
機を見た攻め上がりから陥れたゴールは美しいものばかりで、
未だに成長を続けるクラックは、既にシティの象徴と言っていいはずだ。
シーズン通して素晴らしい出来を見せたチームにあっても、
彼がピッチにいない時には物足りなさを感じる程だ。
ダビド・シルバがいない時ほど、
彼の存在の大きさが証明されていた。
いざ、ワールドクラスへのステージへ
___Kevin De Bruyne
その実力は加入当時から遺憾なく発揮されていたが、
彼は既にワールドクラスの領域へと足を踏み入れつつある。
技術とフィジカルを兼ね備えた現代的ファンタジスタは
今季も至高のパスと高精度のミドルで決定的役割を担っている。
距離関係なく味方の足元へ届けられるパスは攻撃を加速させ、
膠着状態から撃ち抜かれるシュートは幾度となく状況を打開した。
シーズン序盤にはコンディションを落としてしまった事を
自身でも認めていたが、それもそのはず。
それだけグアルディオラが全幅の信頼を置いている証拠であり、
彼がピッチにいる事でもたらされる効果は抜群なのだ。
シティを羽ばたかせる俊足の両翼
___Leroy Sané
___Raheem Shaquille Sterling
誰よりも速く、誰よりも巧いシティの両翼を止められるDFは稀だ。
若さ故の無鉄砲さを克服しつつあるシティの新鋭達は
アタッキングサードでの存在感を急激に高めつつある。
爆発的なスピードが最大の武器である彼らにとって、
敵陣深くに閉じこもる相手が必然的に多くなるシティでの戦いは
決して有利な状況だとは言えない。
しかし今季の彼らは戦術的な引き出しが非常に多くなった。
瞬間的な動き出しのタイミングを身に着け、
極小のスペースから違いを生み出せるだけの才能を開花させている。
シーズンが経過するにつれ、得点感覚も磨かれ始めている。
特にスターリングはリーグ戦17ゴールをここまで記録しており、
試合終盤の劇的な決勝弾を幾度となく決めてはチームを救ってきた。
時には1トップに抜擢される事も、
グアルディオラがスターリングに信頼を寄せている事の表れだろう。
彼らは未だ若く、伸びしろもまだまだ残されている。
来季は更なる飛躍を期待せざるを得ない。
最前線に君臨する絶対的なピース
____Sergio Leonel Agüero del Castillo
”エル・クン”を語るのに、それほど多くの言葉は最早不要だろう。
彼が得点を奪うのに必要なのは、ほんの少しのスペースとボールだけ。
屈強なプレミアのDFらを押しのけるほどの強靭なフィジカル、
狭いエリア内で寄せられようとシュートを撃ち抜くテクニック、
混戦を掻き分け刹那の動き出しから得点を奪う嗅覚____
どれもが最高クラスに洗練され、彼が彼たる所以を物語る。
25試合出場21ゴール。
その成績が、どれだけ重要なチームのピースであるかを証明している。
シティ優勝の原動力は、決してここまで挙げた選手だけのものではない。
ペップ自身がその才能に惚れ込んだギュンドアンも本領を発揮し、
時間の経過と共に高いクオリティーを示したベルナルド・シウバや
改めてその才能を知らしめたガブリエウ・ジェズスも忘れ難いはずだ。
来季には更なる活躍を期待したい若手も多く、
ラポルテやジンチェンコは成長が楽しみな選手だ。
惜しくもリバプールにCL制覇の夢は摘まれてしまったものの、
むしろそれこそが彼らを発奮させる効果をもたらすはず。
新たなシーズンにも、彼らに驕りはないだろう。
そのような事を、あの完璧主義者の指揮官が許すはずもない。
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Matthew |