最高の選手には、最高の賛辞が贈られるべきだろう。
しかし残念ながら、人々の記憶に残るのは多くが得点を決める者であり、
目に見える結果でチームに勝利をもたらす存在であった。
昨季多くのセンセーショナルなゴールを奪い輝きを放ったヴァーディ、
今季多くの決定機と得点をもたらしたアザールらのように。
しかし今季、最も多くの称賛を受けた選手は、
試合の結果のみを見ては絶対に分からない、
文字通りチームの歯車となった小柄な大黒柱だった。
カンテは誰よりも走り、誰よりもひたむきにボールへ向かう。
決して誰よりも強靭な体を持っている訳でも、
誰もが羨むようなスピードやテクニックを備えているわけでもない。
だが、彼は誰よりもボールを奪い、繋ぎ、チームに勝利をもたらす。
昨季、奇跡の優勝を遂げたレスターの原動力は鋭いカウンターだった。
そしてその大いなる武器は、彼なしでは有り得なかった。
単独でピンチを潰し、チームの危機をチャンスに変えて見せる。
そんな彼の重要性を見出していたチェルシーは、
ヴァーディやマフレズではなく、カンテをチームに欲しがった。
その結果はご覧の通り。
相手が誰であろうとカンテはカンテであり続け、
それどころか今季はゲームメイクすら担えるまでの存在になった。
質の高いパスコントロールでチームを前へと進めれば、
自陣の幅広いエリアをカバーしてピンチを潰す。
対戦した相手からすれば、カンテの存在こそが大きかったはずだ。
カンテが今季受賞したのは、
- プレミアリーグ年間最優秀選手賞
- イングランドサッカー記者協会(FWA)年間最優秀選手賞
- イングランドサッカー協会(PFA)年間最優秀選手賞
専門家から、記者から、ファンから、
そして何より実際に対戦した相手選手から最も多くの得票を得たカンテ。
今季のプレミアリーグは彼の年だった。
そう言っても差し支えないほどの結果だろう。
何より対戦した多くの選手達からも彼は賛辞を受けており、
国内外問わずレジェンドたちからも称賛を受けた事も印象的だ。
英雄と戦犯が一夜にして入れ替わるフットボール界だが、
カンテを非難する声どころか、彼を批評する声すれ珍しい。
誰から見ても、今季のカンテは傑出し、素晴らしかったのだ。
「リーグを優勝できたのは、素晴らしい選手達とプレーしているから」
そう受賞のインタビューで語るシャイな彼だからこそ、
チームメイトやサポーターが魅了されてしまうのだろう。
誰が見ても、彼はチームに献身的に貢献している。
だがそんな事は彼にとっては「当たり前」なのだ。
この夏からは、彼にとって未知の世界であるCLが待っている。
かつての仲間達はベスト8でその夢を終えたが、
彼が、チームが目指しているのは紛れもなく優勝である。
決して簡単な道ではないだろうが_____
それでもなお、彼の活躍が目に浮かぶのは仕方のない事なのだ。
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Matthew |