○引き分けに終わったチェルシーvsリバプール
注目のビッグカードだった。
今季独走状態にある首位チェルシー、そしてそれを追うリバプール。
前半戦の両者の戦いは2-1でリバプールが勝利したが、
リバプールは2017年に入ってからリーグ戦未勝利が続いており、
決して良い状態とは言えない。
対するチェルシーは年明けのスパーズ戦を落としたものの
後に引きづるような事はなく、その後も連勝。
首位をガッチリとキープしている。
○強かさが光ったチェルシー
高いインテンシティーを試合を通じて狙うレッズとは対照的に、
チェルシーは至って落ち着いていた。
焦らず、惑わされず、しかし情熱的に。
プレー自体には熱が伴うものの、勢いに流されてしまい
チームとしてのバランスを失うような事は皆無に等しかった。
D.Luis pic.twitter.com/qpllo2iJkP
— Axel-SMITH (@FantaskickAxel) 2017年2月5日
先制したD.ルイスのFKも含めて、強か(したたか)だった。
一瞬の隙を見逃さずゴールを奪ったのは高い集中力の賜物であり、
シーズン通してコンテがチームに求め続けてきた事だ。
”常に集中しろ。勝利の為に。”とピッチで叫ぶ闘将の薫陶を受ける
チェルシーの選手達は、かつて失っていた自信を完全に取り戻している。
○速く、強く、球際で闘うリバプール
立ち上がりから激しいチェイシングで追い込むものの、
リバプールの狙いは必ずしも満たされなかった。
チェルシーは危険な位置でのボールロストのリスクを感じれば
躊躇いなくジエゴ・コスタや逆サイドWBへロングボールを送る。
その為コンパクトに保たれたプレス陣形を度々無効化され、
むしろ大きく開いたスペースでの1対1に付け込まれる場面もあった。
それでも失点に繋がらなかったのは一重にリバプールの選手が戦い、
対人戦においては簡単に釣り出されず、粘り強くプレーしたからだろう。
クロップは自身の哲学を曲げる気も、チームの戦術を変えようとはしなかった。
あくまで試合のインテンシティーは高く、
プレッシングは激しく、人とボールは速く動く。
前半からサイドを中心にチャンスを作るも、エリア内で強さに欠ける。
その為前半の途中からはエリア内へ
インサイドハーフのジャン、ワイナルドゥムも積極的に進出させ、
それは実際に後半の同点弾を導いた。
Wijnaldum pic.twitter.com/vajBcsOEF7
— Axel-SMITH (@FantaskickAxel) 2017年2月5日
バランスなど知ったことか、と思える程にリバプールは前へ進んだ。
時間が経つにつれプレスは激しく、そして密度を伴って機能した。
徐々にビルドアップでミスを犯し始めるチェルシーだったが、
それはリバプールからもたらされたマイボール時の閉塞感によるものだ。
「点を取られたのなら、取り返すだけだ。」とはクロップの言葉。
まさに言葉通り、リバプールは闘って見せた。
○試合後半は打ち合いへ、それでも決着はつかず
リバプールの熱がそうさせるのか、
試合が終盤に近付くにつれ試合は打ち合いの様相を呈した。
ジエゴ・コスタのPK獲得で万事休すだったリバプールだったが、
ミニョレのビッグセーブに救われたことで
その熱が冷める事は試合終了のホイッスルが鳴るまでなかった。
チェルシーは徐々にジリ貧の状況が続いたが、
後半途中に投入されたセスクの起用とシステム変更が功を奏す。
カンテのアンカーにマティッチ+セスクの3センターは
中央のプロテクトとカウンター時の推進力に長け、
ボールを奪った瞬間、ポジティブ・トラジション時のクオリティを
格段に高める事に成功した。
セスクが入った事で、彼から2トップへ直接チャンスが供給される。
コンテが採用したセスクの役割とシステム変更は、
守備と攻撃両面で抱えていた大きな問題を見事に解決して見せた。
○引き分けで満足のチェルシーだが….リバプールは。
試合後クロップはいつものように選手達を称えていたが、
それでも選手達の表情には曇りが見えた。
”チェルシーに負けなかった”のではなく、
”やはりまた勝てなかった”という悲壮感を感じ取っていたのだろうか。
タイトルへの期待が高まった序盤戦に比べ、
今のリバプールに漂う雰囲気は決してポジティブなものではない。
懸命にチームを鼓舞する指揮官の声も虚しく、
選手達には疲労感と焦燥感も含めた、マイナスな感情が見て取れた。
コンテも勝ち点3を取れなかった事自体には落胆していたものの、
それでもタイトル争いをする上で強豪相手に勝ち点を奪ったのだ。
それも今季チームが初めて敗けた相手なのだから、
苦手意識を克服する上でも重要な勝ち点となるだろう。
リバプールと違ってチェルシーからすればこの勝ち点1はポジティブで、
続くアーセナル戦を闘うためにも必要な勝ち点だった。
更には今節他の上位陣も軒並み勝利を挙げられず停滞。
天さえも、チェルシーを優位に立たせようとしているかのようだ。
勝つ可能性のある試合であった事も確かだが、
それでも、コンテはチームに自信と誇りを感じたはずだろう。
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Matthew |