チェルシー 3
34’ エンゴロ・カンテ
45’ ジョルジーニョ (PK)
80′ ペドロ・ロドリゲス
ハダースフィールド 0
11日にプレミアリーグ第1節、
チェルシー対ハダースフィールドの試合が行われた。
試合会場はハダースフィールドのホーム、ジョンスミススタジアム。
サッリを新監督に招聘し優勝を目指すチェルシーの相手は
昨季プレミア初挑戦ながら残留を果たしたハダースフィールドに。
W杯を戦った選手らが合流を果たし、
本格的にサッリの哲学がチームに浸透し始めているチェルシーなだけに、
今後の試金石となる非常に大切なアウェイゲームとなった。
対するハダースフィールドも積極的な補強を行っており、
GKヘイマーを始めDFコンゴロ、ドゥルム、FWディアカビなど
若手ながらも実力とハングリー精神を併せ持つ即戦力を獲得している。
彼らにとっての至上命題は「残留」であるだけに、
チェルシーをホームで迎え撃つこの試合で勝ち点を奪う事が最大の目標だ。
明確になりつつあるサッリ・チェルシーの流儀
プレシーズンからサッリは前指揮官コンテの戦術から脱却し、
4-3-3のシステムをベースにした組織作りをスタートさせた。
ショートパスを基本としたポゼッションで試合の主導権を握り、
守備時にはボールホルダーに対してアグレッシブなプレスを敢行する___
チームが始動したその日から変わらない哲学を、
マウリツィオ・サッリはチェルシーに語り続けている。
まるで教鞭を振るう教授の如く、論理的で明確な考えをもたらしているのだ。
そういった意味でも彼の教え子であるジョルジーニョの存在は大きい。
この試合でも先発に名を連ねプレミアデビューを飾った彼だが、
試合開始からハダースフィールドの猛烈なプレスを受け
思うようにボールを受ける事が出来ないでいた。
そこでチェルシーはパスの起点をDFラインに下げプレスを緩和させると同時に、
ジョルジーニョの広い視野を活かしたコーチングでマイボールを保持。
更には前線に釣り出されたハダースフィールドの選手らの背後に
D.ルイスやリュディガーが縦パスを撃ち込む事でチャンスを演出する結果に。
ボールを持たずともチームに落ち着きをもたらすジョルジーニョの存在は、
今季のチェルシーを語る上で欠かせないものになるだろう。
不完全燃焼に終わっていた選手達を再生
この日先発に名を連ねたメンバーには、
アントニオ・コンテ前指揮官の下では輝きを放てずにいた選手の名もあった。
D.ルイスは目に見えてコンテと関係を悪化させ出場機会を失い、
冬に加入したロス・バークリーは何らインパクトを残せずシーズンを終えた。
コンテ就任の年には躍動したペドロも昨季はプレーに精確性を感じられず、
彼らは皆ロシアW杯への切符を掴めず、失意のシーズンオフを送ったはずだ。
しかし開幕戦で先発の期待に彼らは応えて見せた。
こんなにも活き活きとピッチを走るバークリーは何時振りだろうか。
あんなにも楽しそうに笑みを浮かべながらボールに絡むペドロを見たのは?
そしてこれほどまでに、カバーリングとパスセンスを光らせるD.ルイスの昨季は何だのか?
昨季の不調の要因に、彼らの存在が影響した事は言うまでもないだろう。
サッリはチームに素晴らしい競争をもたらした。
次の試合、誰をチョイスするのか完全に予想するのは難しいほどにだ。
自由を得たカンテ。そのダイナミズムは試合を左右する。
チームの命運を握るやもしれぬこの試合で先制点を挙げたのは
”小さな巨人”であるエンゴロ・カンテ。
母国の悲願であるW杯優勝の文字通り原動力となった彼は
試合を決定づけるゴールを見事奪って見せた。
昨季は相棒を務めたセスクの守備的負担を軽減させる為か
チーム後方に残る事が多く、ゴール前での仕事はそれほど多くなかった。
そんなカンテはサッリの下、右インテリオールとして起用され続けている。
パスのリンクマンとして、攻撃のスイッチとして、プレッシングの要として、
多くのタスクをカンテはその小さな身に期待されているが、
カンテ自身はその役割を楽しむかのように完璧にこなしている。
そもそも彼はピッチを所狭しと走り回る方が性に合っているのだろう。
その冴えわたるボールハントの技術だけに着目し、
限定したエリアでポジションを縛り付ける事は愚かな行為なのだ。
快勝ながらも気になるモラタの状態
正直な所、この日のモラタは”また”イマイチな出来だった。
確かに高い技術でクサビのボールを受け止めチャンスに繋げ、
瞬間的なスピードとクイックネスで相手を置き去りにするプレーは魅力的だ。
しかし、どうにもフィニッシュの精度が向上しない。
味方のお膳立ても、自らボールを呼び込むハングリーさも欠けていた。
フィニッシュまでの攻撃のアイデアには事欠かないだけに、
早いうちに彼の得点センスが磨き上げられるのを期待したい。
バチュアイがバレンシアへとまた旅立った以上、
彼に求められるストライカーとしての責任は非常に大きい。
今のモラタに必要なのはチャンスメイクやポストプレーでなく、
「得点」という目に見えた結果のはずだ。
若手の台頭も光ったプレシーズン…理想のスカッドは如何に
今、サッリはチームにとって理想なスカッドの構成を考えているはずだ。
ナポリの頃とは財政状況も人材の豊富さも話が違う。
会見でサッリは「完璧なスカッドだ。」とフロントの補強に感謝している。
彼にとって必要だと思った人材が手元にある喜びを感じているのだろう。
アリサバラガ、ジョルジーニョ、カンテやアザールに関しては
何の疑いもなくチームの中核を成すはずだ。
中盤に関しては潤沢なまでの人材が揃っており、
各々異なった特徴を備える魅力的なセクションだと言える。
DFやFWに関してもアンパドゥやハドソン=オドイなど
今季ブレイクが期待される逸材が実力を示し始めている。
意図せぬ若手の台頭も可能性としてある以上、
サッリは多くの選手のマネジメントに追われる立場であり、
ナポリの頃のようにメンバーを固定して試合を進める事は自身の首を絞めかねない。
ズマやバチュアイなど余剰な人員を整理したのも、そういった事情があるはず。
(そもそもサッリが彼らの存在を望まなかったかもしれないが)
サッリはその手腕を日々問われる事になるだろう。
そしてその結果が、チームを最善の方向に導かんことを祈るばかりだ。
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Matthew |