グアルディオラ新体制が始まった昨季、
マンチェスター・シティが見せた姿は期待を大きく裏切るものだった。
期待と共に迎え入れられた稀代の戦術家だったが、
その歓声に応えられた試合は数少なく、栄光の日々は遠い未来のように思えた。
昨季は様々な問題を抱えていた。
選手に厳格な規律を課さず、自由さを保障していた前任者に慣れていた
選手達は難解なペップの哲学を吸収できる素地が無かった。
新加入の選手達も期待に見合った活躍を見せられず、
グアルディオラは監督キャリアで最も辛いシーズンを送る事になった。
しかし、今季は見違えるような完成度を見せている。
時間の経過と共にクラブには彼の哲学と戦術が浸透し始め、
プレシーズンから質の高い内容の試合を実現できている。
G.ジェズスとアグエロを組ませる3-5-2の新システムも機能性を見せ、
マンチェスター・シティは現在プレミアリーグの首位に立っている。
プレミア頂点の座は、射程圏内と考えておかしくない。
指揮官とフロントが相思相愛の関係なのも大きいだろう。
FDを務めるチキ・ベギリスタインとはバルセロナ時代からの旧知の間柄で、
今オフの補強は全てグアルディオラの意思に沿って行われたはずだ。
サイドバックにおよそ2億ユーロ近い資金を投入し、
攻撃陣には質の高いポゼッションと創造性をもたらすB.シウバ、
完全に自信を失ってしまったブラボに代わる新守護神にエデルソンを獲得。
元々戦力値は高かったスカッドが更に充実し、
質と量を兼ね備えたリーグ屈指の陣容を揃えている。
特に新加入のSB、メンディとウォーカーは早々とチームにフィットし
決定的なプレーを開幕から披露している。
メンディは残念ながら負傷により年内復帰は難しいものの、
先日のチェルシー戦ではMFが本職のデルフが素晴らしい出来を見せている。
特にGKエデルソンの存在感は特大だ。
昨季シティが粗末な失点を重ねた根本的な原因はGKのクオリティー不足にある。
グアルディオラが掲げるポゼッションを実現するにはGKからのビルドアップが
必要不可欠な要素であり、攻撃全てのベースと言っても良い。
しかし、常に自信とクオリティーを保障するエデルソンの存在により、
チーム全体に非常にポジティブな影響を与えている。
高いフィード能力はカウンターの起点としても機能し、
常に強気な姿勢は前に並ぶCBらを奮い立たせている。
「ストーンズとオタメンディではシティの優勝は難しい」
それが昨季の総評であったように思える。
今夏CBを補強しなかった事は大きな疑問点ではあるものの、
ここまで大きな崩れも無く過ごせている彼らを再評価する者もいるはず。
頼れる主将コンパニも本格的に復帰できれば、最高のシーズンを過ごせる可能性は高い。
勝ち点で並ぶマンチェスターの宿敵ユナイテッドの存在もあり、
今季プレミアリーグのタイトルはマンチェスターの両雄が争う形になっている。
リバプールやチェルシーが小さくない躓きをしているだけに、
冬までこの流れが続く可能性は十分にある。
シティにとって最大の敵は過密日程に伴う負傷離脱者かもしれないが、
それでも控えまで戦術が浸透しつつある以上、大きな障害にはならないだろう。
持てる力の全てを発揮しつつあるシティ、
独走でシーズンを終えても不思議はないほど、充実のスタートダッシュだ。
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Matthew |