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【特集】各クラブの補強予想….ポイントは”左サイドバック”

莫大な放映権料が各クラブに分配され、

豊富な資金力を全クラブが持ち合わせているプレミアリーグ。

シーズン終了を待たずにして移籍話は加速していくであろうが、

次の移籍期間中、ポイントは「左サイドバック」にあるかもしれない。

今回は本職、専任者が乏しいとされる左サイドバックにスポットを当て、

プレミア上位各クラブでの役割、実状を探ると共に、

どういった特徴の選手がチームにフィットするだろうかを考えていきたい。

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近年サイドバックは単純なDFの1人としての位置付けではない。

攻守両面で貢献できる運動量、テクニック、フィジカル___

そして多くの役割を担えるだけの戦術的インテリジェンスを求められている。

チェルシーのコンテしかり、シティのグアルディオラしかり。

今や多くのクラブの指揮官がサイドバックに様々なタスクを担わせ、

チームの歯車を動かす重要なピースと位置付けていると言っていいだろう。

特にグアルディオラが欧州を席巻したポゼッションスタイルにおいては、

サイドバックはボールを落ち着かせる為のセーフティ・ポジションであり、

攻撃の起点として機能する非常に大きな存在であった。

前任したバイエルン・ミュンヘンでは両SBを可変的なポジションとし、

攻撃時にはCBの前へ位置する事でボランチとして機能、

守備時にはサイドだけでなくバイタルエリアのケアまで任せる___

「革新的」とさえ揶揄されたサイドバックの戦術的機能性を以て、

ペップ・バイエルンは圧倒的な内容で国内リーグ連覇を成し遂げていった。

 


サイドバックの重要性は上述した通りだ。

では、各クラブはその重要性に見合った人材は確保できてるのだろうか?

実際のプレミアのクラブ、

とりわけ総合的に大きなタスクを担っているであろう上位クラブの

左サイドバックはどうなっているかというと_____

正直、サポーターや指揮官からの期待に応えている選手は多くない。

冒頭でも話したように、そもそも左サイドバックが本職の選手は乏しい。

勿論、まず左利きの選手が少ないという事情もあるが、

サイドバックはしばしばウイングないしサイドハーフの選手が務める場合もある。

(ユナイテッドのバレンシアのコンバートが良い例だろう)

リバプールのミルナーのように中盤のユーティリティプレイヤーを

置く場合もあるため、比較的コンバートしやすいポジションでもあるのだ。

トップクラスの左サイドバックは未だ人材難であり、

将来有望な左サイドバックはすぐにビッグクラブに引き抜かれる傾向さえある。

資金力溢れるプレミアクラブでさえ、

こと左サイドバックというポジションにおいては、

理想通りの補強が出来ているとは言えない状況が続いてしまっている。

では、実際に各クラブの左サイドバックを見ていこう。


チェルシー

 

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チェルシーの左サイドバック(ウイングバック)は

昨夏加入したばかりのマルコス・アロンソが務めている。

とはいえ定位置を奪取できたのはチームが3-4-3に移行してからで、

4バック時の左サイドのファーストチョイスはアスピリクエタであった。

首位を走るチェルシーは安定した強さで今季を戦ってきており、

攻撃時には5トップ、守備時は5バックの一翼を担うアロンソの評価は低くない。

とはいえ、物足りなさも感じてしまう。

近頃はセットプレー時のキッカーとしても存在感を示してきたものの、

攻守における対人プレーの拙さはシーズン当初から解消されず、

相手のサイドバックが対人に優れる選手だった場合は圧倒される事もある。

上背はあるが空中戦に強いわけでは決してなく、

フィジカルコンタクトに関しても秀でているとはいえないのだ。

彼の強さは運動量と戦術的理解度の高さにあるが、

裏を返せば、それ以外さして大きな存在感を示しているかは疑問だ。

その為左サイドバックはチェルシーにとって、

数少ない補強ポイントであると言っていいだろう。

本気でCLを獲りに行きたいなら尚更だ。

攻守における安定感、ダイナミズム、高いプレー精度___

決してコンテから求められる資質は少なくないが、

フロントは指揮官のお眼鏡に適う人材を探しているはず。


マンチェスター・ユナイテッド

 

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ユナイテッドの左サイドバック(LSB)は、

マッテオ・ダルミアンとルーク・ショー、

そしてダニー・ブリントの3人をモウリーニョは採用している。

負傷が絶えないショーは評価が難しいが、

少なくともモウリーニョはダルミアンとブリントを目的に合わせて使っている。

ダルミアンはDFラインから中盤まで幅広く活躍できる選手であり、

サイドを問わず戦場にできるユーティリティ性を備える。

本来の彼のポテンシャルが最大限生かされているとは言い難いが、

左サイドに機動性を求め、相手アタッカーを封殺したい時には彼を起用する。

ブリントはCBでの起用もされている事からも、

限定されたエリア、とりわけ中央に絞って守備を求める場合や、

ボールを落ち着かせてゲームを支配、もしくは試合のクロージング時に起用される。

ブリントは高いフィード力が大きな魅力の一つではあるものの、

積極的に前線へのパスをチャレンジする為、簡単にロストする事もしばしば。

その為か、ブリントは開幕から徐々にチーム内での序列が下がり、

今現在、モウリーニョからの信頼を得られていない。

ユナイテッド、つまりモウリーニョが求める左サイドバックの資質は

正確な対人守備、高いプレー精度、強靭なメンタリティといった所か。

何より軽率なミスを嫌うモウリーニョからすれば、

まずDFは失点しない事が至上命題であり、最大のミッションなのだろう。

レアル時代、あのマルセロですら対人戦を磨かせ欧州屈指の選手へと育てた。

高度に守備が戦術化された、

セリエというリーグで揉まれたダルミアンを欲したのも当然かもしれない。

まずは相手にやられない事。

それがモウリーニョにとってのサイドバックだ。


マンチェスター・シティ

 

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シティのLSBを担うのはアレクサンダー・コラロフ、

そしてガエル・クリシーの2人である。

共に守備よりも攻撃において魅力がある選手であるものの、

そのどちらもが、ペップの期待に応えているとは言い難い。

コラロフは元ウイング出身だけあって積極的な攻撃参加が持ち味。

高いフィード力とフィジカルを買われて当初CBも任されるも、

そもそもサイドでの対人守備すら問題を抱えていた彼を中央に据えた事で

失点は歯止めが利かないものとなり、コンバートは半ば棚上げ。

(相方として選ばれたオタメンディ、ストーンズのどちらも

不慣れな彼をカバーできるような選手ではないのも致命的だったが)

クリシーは流石本職だけあって随所に安定感は見せるものの、

ビッグマッチになればなるほど不安定さが露呈する事が評価を下げる。

近年ではスピードの衰え、消極的な判断やプレーも目立ち、

キャリアは下降線の一途を辿り始めてしまった。

ペップが彼ら2人に満足しているはずもなく、

(というかDFラインで満足している選手は皆無だろう)

来夏には大型補強がしきりに噂されている。

とはいえ、彼らには情状酌量の余地もある。

確かに、ペップの求めるサイドバックの役割は難解なのだ。

(前任者だったペジェグリーニやマンチーニが放任主義で自由だった事もあり、

プレーの全てを論理的に行うグアルディオラ流に戸惑うのも無理はない。)

冒頭で触れたような可変的ポジショニングも当初は採用したが、

戦術的なプレーに慣れないシティの選手達は困惑し、実現不可。

一旦役割を「普通のサイドバック」のレベルにさえ戦術レベルを落とし、

本当に最低限のプレー原則を守らせるのみとなっているのが現状だ。

では、そんなシティに必要なサイドバックというと、

高い戦術理解度、確かな足元の技術、爆発的なスプリント力

が具体的に挙げられるだろう。

バルセロナ時代のジョルディ・アルバ、

そしてバイエルン時代のダヴィド・アラバが良い例だ。

とりわけアラバに至っては、ペップ流サイドバックの理想形と言っていい。

ペップの戦術を理解し、再現できる事が最低条件であり、

なおかつポゼッションを確立できるだけの足元の技術が必要。

そしてグアルディオラの攻撃の最終局面はサイドエリアの突破が鍵で、

相手サイドの深い位置を強襲できるだけのスピードが求められる。

迅速なプレッシング、質の高いトランジションを行う為にも、

スピードは水準以上である事が重要となるだろう。


アーセナル

 

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アーセナルの左サイドバックといえば、

ナチョ・モンレアルとキーラン・ギブスの両者が長年務めている。

ヴェンゲルは幾度となく彼らへの信頼を口にしているが、

その言葉を鵜呑みにできるファンは決して多いとは言えないだろう。

モンレアルはチームのファーストチョイスであり、

ボールポゼッションを保てる確かな技術を備えている。

が、反面フィジカルコンタクトやスピードに秀でた選手ではない。

機を見た攻め上がり、ポジショニングなど戦術的インテリジェンスが高く、

そこが彼の最大の魅力だと言っていいだろう。

ギブスはモンレアルに比べスピードとフィジカルに優れ、

爆発的なスプリントを駆使してサイドエリアを走破する事が可能だ。

しかしプレー精度の粗さは一向に改善される見込みがなく、

素晴らしい試合を見せたかと思えば、試合から一切消える波の大きさも。

高いポテンシャルが開花すれば面白いが…いつになる事やら。

コシエールニー、ムスタフィ、ベジェリンと

DFラインの他のポジションには申し分ない人材を揃えているだけに、

豊富な運動量、強靭なフィジカル、高度なテクニックが必要条件。

中盤にはジャカやエジルを筆頭に展開力に優れる選手が多く、

仮に単独でサイドを圧倒できる人材を得られれば、

ベジェリンとの両翼はリーグ屈指の破壊力を備えかねない。

元々ムービング・フットボールを掲げるチームなだけに、

機動力重視の人材を獲得するのが現実的だろう。


リバプール

 

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これまで紹介してきたチームの中では、

正直ダントツで台所事情が良くないのがリバプールだ。

左サイドバックの先発を務めるのはジェームズ・ミルナーで、

バックアッパーとしてアルベルト・モレノが控えている。

ミルナーはシーズン当初からクロップ監督にLSBを任され、

確かな安定感と的確なポジショニングでチームに貢献している。

とはいえ力強いダイナミズムが最大の魅力である彼がいるべき場所ではない。

前所属のシティ退団の理由もサイドバック起用による不満であり、

「中盤でプレーしたい」と発言したように本人自身納得していないはず。

高いプロ意識を持つため不満を漏らす事は無いが、

チーム内に決して小さくは無い火種を抱えている事は確かだ。

そして彼の控えを務めるモレノ。

とにかくプレー精度に欠け、攻守で貢献が乏しい。

プレー自体消極的になりつつあり、

最低限の仕事をこなせる試合すら少ない以上、

彼の居場所がリバプールにあるとは誰もが思っていないのでは。

もし仮に彼が本職である左サイドバックで機能すれば、

消耗の激しい中盤センターにミルナーを配する事で

チームのダイナミズムと競争サイクルは劇的に活性化される。

現状ジャン、ワイナルドゥム頼りと言わざるを得ない中盤の問題を一気に解決し、

レッズの生命線と言える「激しさ」を維持できる事すら可能だ。

が、モレノにそんな期待をするのは今更無理なのだ。

90分絶えず動ける走力、強烈なダイナミズム、強靭なメンタリティ

といった特徴を備える選手ならばクロップを納得させられるはず。

特にチームの代名詞と言える激しいテンションに90分ついていけるだけの

走力とメンタリティを持っている事は絶対だろう。

逆サイドのクラインと似たようなタイプを見つけるのが賢明かもしれない。

ともかく、どこのチームよりも、

補強の優先度が高いのリバプールだと言っていいだろう。


 

非常に長々と書いてしまったが、

現状左サイドバックで申し分なく活躍しているのは

トッテナムのダニー・ローズくらいなもの。

今季PFA年間ベストイレブンに選ばれた事、

そしてその選考基準が他チームの選手からの投票である事からも

対峙した選手達でさえいかに高く評価しているかを証明している。

プレミアリーグの左サイドバック事情自体は決して悪くない。

ベインズ、クレスウェル、バートランドなど、

実力者もいないわけはないのだ。

が、それでもビッグクラブの現状は芳しくない。

かつてのアシュリー・コールやパトリス・エウラのような、

名実ともにトップクラスの選手が来てくれる事を祈っている。

この記事を書いた人

Matthew Matthew

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