今後に向けた、明るい材料の少ない試合だった。
かねてより懸念されていた最終ラインのミスから失点し、
最後までチャンスを決めきれなかった。
しかし、悲しんでいるだけでは状況は良くならない。
次の試合は必ずやってくるし、
チームを立て直す時間はまだまだある。
このアーセナル戦から何を学び、
何を持ち帰るかが重要だ。
今のチェルシーに欠けているものを上げるとすれば、
「勝利へのモチベーション」
「創造性」
「リーダーシップ」
の3つが挙げられるだろう。
悲しい限りだが、この3つはかつてチェルシーの強みだった点。
時間を経る事で失われたこれらを取り戻すのは簡単ではないだけに、
今後のチェルシーは厳しい状況に向き合わなければならない。
「勝利へのモチベーション」
指揮官コンテは、溢れんばかりの熱情を以て試合に臨む。
それは試合以外の時間だろうが関係なく、
コンテはフットボールに対して情熱を以て向き合っている。
勝利こそが全てであると語り、それに向かう姿勢こそが重要だと。
果たして、チェルシーの選手達はそうだろうか?
昨季のチェルシー低迷の大きな要因には選手のコンディション不足、
とりわけメンタリティ面の問題が大きかった。
プレーに迫力はなく、厳しい時間も耐え切れず失点を重ねた。
モウリーニョはそんな選手達を厳しく叱咤し、
どれだけ自分たちが無様な姿勢を見せているか自ら批判した。
そしてそんなモウリーニョは、チームの求心力を失ってしまった。
コンテ就任によりモチベーションは復活の兆しを見せた。
開幕から動きは激しく、コンテの熱情はチームを刺激したかに思えた。
しかし、昨季染み付いてしまったかもしれない、
「自分達が主導権を握れないと戦えない」という、
かつてのチェルシーからは考えられないスピリットが、
今のチェルシーにはあるように思えてしまうのだ。
「創造性」
今のチェルシーの攻撃に引き出しは少ない。
確かにアザールを始めサイドにはタレントが揃っており、
個人で打開できる局面は少なくない。
しかしそれだけで戦えるほどプレミアは甘くない。
人に強いDFが相手ならそれだけで迫力は半減し、
チームの攻撃の選択肢はほとんどなくなってしまう。
今季のチェルシーは4-1-4-1を採用。
サイドの選手が攻撃的に振る舞える反面、
中盤センター3枚は攻守を高いレベルでこなさなければならない。
その結果がカンテ、マティッチ、オスカルが主軸の理由だ。
その中でもカンテは存在感を示しているものの、
マティッチはアタッキングサードやエリア内で違いを作れず、
また中盤でも高い位置を取る事が求められているオスカルは
元々コンビーネーションでの崩しが持ち味である為、
D.コスタと2トップ気味になる事で良さが活かされない。
オスカルが例え2ライン間でボールを受けても、
周囲にはコスタしかいないのだから攻撃が停滞するのは必然だ。
現有戦力で最も創造性を備えるのがセスクだが、
彼も相手を背負ってのポジションでは全く意味がない。
(アーセナルとの試合ではそれが一番の問題だった)
もしセスクの持ち味を活かすなら、前を向ける低い位置が理想。
しかしそうなればマティッチを上げなければバランスが取れないが、
上記の通りマティッチは攻撃面での貢献が厳しい。
むしろマティッチも下げ、セスク&オスカルにした方がスムーズだが、
守備にも高い貢献を望むコンテが採用するとは思えない。
中盤での最適なバランス構成を見出せない限り、
この問題は絶対に解決されないだろう。
残念な事に、今チェルシーで先発しているメンバーに
リーダーシップを感じ取れる選手はいない。
厳しい時間帯に誰よりも声を出し、
味方を叱咤激励するような「熱さ」を示せる選手は、
チェルシーにはもはやジョン・テリーしかいないのだ。
現在ピッチでキャプテンを務めているのはイバノビッチ。
彼はチームを鼓舞する事も少なければ、
ピッチ上のリーダーとして振る舞う事も乏しい。
さらに彼自身パフォーマンスは不安定である以上、
チームのリーダーとして振る舞えるはずもない。
ケーヒルは軽率なミスをする癖がいつまでたっても直らず、
D.ルイスは元々そんなタイプではない。
D.コスタは確かに誰よりも声を出すが、
それは決してチーム為ではなく自身のフラストレーションによるもの。
チームの旗手となる選手がいないのだ。
それでは、難しい時間帯を乗り越える事も、
主導権を握れない試合を制する事も出来ない。
負けるべくして負ける、そんな試合が続いてしまっている。
かつての強いチェルシーには全てのポジションにリーダーがいた。
GKにチェフ、DFにテリー、MFにランパード、
そしてFWにドログバ….。
厳しい試合での彼らほど頼もしく感じる選手はおらず、
また実際に難しい試合を何度もひっくり返した。
そんな「絶対に負けない」という強い意志を、
今のチェルシーに感じ取れるだろうか。
シーズンはまだまだ続く。
38試合のうち6試合が終わったばかりだ。
問題点は明確だし、コンテが黙っている訳もない。
誰よりも情熱を秘める指揮官がこのままチームに絶望するとは
到底考えられない。
むしろこの敗戦で目が覚めるはずだ。
このままじゃいけないと。
そうでなければ、この敗戦は何の意味も成さない。
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Matthew |