9月14日、レスターは新たな歴史を刻んだ。
クラブ史上初のチャンピオンズリーグ。
選ばれた者がけが集う夢の舞台に、
奇跡の勝者達は辿り着いた。
レスターは初のCLを3-0と快勝。
だが試合後勝利を祝うピッチに、
昨季優勝の立役者のFWはいなかった。
「落胆しました。」
試合後のインタビューで、岡崎はメディアに語った。
試合の数時間前に宣告されたベンチ外。
戦術や新加入選手の起用の為…
というのが実情であろうが、
これまでチームに全てを捧げてきた岡崎にとっては辛かった。
ラニエリ自身もインタビューで岡崎について言及。
『デイリー・メール』でラニエリは、
「岡崎がいなくてとても悲しい。
我々にターゲットマンがいる事は重要だった。
セットプレーで身長の高い選手が必要であり、
だからムサを選び、スタンドに岡崎を残した。」
と、戦術上の理由で岡崎を外したと語った。
確かに、ブルージュの守備陣はそれほど高さがなく、
リバプール戦でも見せたように、
L.エルナンデスのロングスローは1つの武器になっただろう。
実際にレスターはこの試合でロングスローから先制しており、
まさにラニエリの狙い通りだった、と言っていい。
また岡崎はインタビューで、
「自分がリバプール戦でロングシュートを打った時、
ラニエリからは『お前は打つな。昨季はあそこでパスを選択して、
余計な事をしなかった』と言われた。
俺はもっと点を取りたいという欲がある。でも監督は現状維持でいい、と。
ベンチ外にされたのは、自分が悪いというよりは、監督の意思。
結果を出して、岡崎を使わなければ、と思わせないといけない。」
と、今後の課題と姿勢について言及した。
岡崎の発言を的外れと言うのは酷だろう。
実際、ラニエリが岡崎に求めているのは得点以上に「献身」であり、
チームの為に全力で走り続ける事だ。
昨季少ない得点に終わってもラニエリは岡崎への信頼を口にし、
その重要性をどんな時でも語った。
それでもFWとして得点を求める岡崎の姿勢も仕方のない事で、
両者の求める事が違えど、お互いの立場がわかっている以上、
外野がとやかく言えるような事でもない。
岡崎は岡崎らしく、これまで以上に全力でプレーする他にはないのだ。
この試合は、ラニエリにとってチャレンジの場でもあった。
今季のリーグ戦では苦戦が続き、
思うような勝ち点を挙げられていない。
だからこそ、リーグでは昨季の戦い方と選手を軸に、
「らしさ」を取り戻しながらの試合を続けている。
そのため新加入選手を実戦で起用するだけの余力がなく、
チームバランスの保持に追われているのが現状だ。
CL初戦、歴史でも重要な一戦ではあったが、
新しくチームに合流した選手を試すには、この試合しかなかった。
L.エルナンデスの戦術しかり、
FWムサ、スリマニらを試すにはこの試合が絶好のチャンスだったのだ。
その為、「らしさ」を捨て岡崎をスタンドへ残し、
新しい選手選択の可能性を広げる必要があった。
ここ数試合のリーグを固定メンバーで戦っている以上、
チーム内の競争力低下も懸念されていた。
岡崎をベンチ外に追いやった理由は、複雑だと言える。
信頼しているからこそ、の選択だったのかもしれない。
岡崎に今後求められる事は至ってシンプルだ。
なぜなら、彼はチームでの立場を失ったわけでも、
監督からの信頼を裏切ったわけではない。
とにかく起用された試合で全力を出し、
これまで通り、いつも通りにチームへ貢献する事のはずだ。
そしてその上で、彼自身感じている得点を重ねなければならない。
(酷な言い方をすれば、彼はチームのエースではないのだから)
悲観的になる必要もなければ、感傷的になる必要もない。
シーズンはまだまだ、始まったばかりなのだ。
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Matthew |